【M&A】【株式譲渡契約】株式譲渡契約前の法務DD(デューデリジェンス)で、以前の株式譲渡の瑕疵や簿外債務の可能性が発覚したが、株式譲渡契約書にて法的問題点を解決しM&Aを実行できた事例

1.業種、相談の概要

企業におけるITインフラの整備、ソフト開発等を行っている会社の社長様からのご相談です。

さらなる事業拡大に向けてM&Aを検討しているが、依頼会社様にとってM&Aは初めての経験となるため、M&Aを実施するにあたってどのような点に注意をすれば良いのか、対象会社に関する法務デューデリジェンス(以下、「法務DD」といいます。)の対応について、三輪知雄法律事務所へご相談にいらっしゃいました。

デューデリジェンスとは

企業の経営状況や財務状況などを事前に調査することをいい、調査の対象は、法務面、財務面、ビジネス面などに及び、M&Aを行ううえで、欠かすことができません。このうち、弁護士が行う法務面からの事前調査を「法務デューデリジェンス」と呼びます。

2.法務DDの実施により判明した法的問題点と対応

法務DDとは、対象会社の資料を事前に確認し、法的問題点を指摘することを目的として行うもののことをいいます。

対象となる資料としては、過去の株主総会の議事録、取引に関する契約書、決算書など多岐に及びますので、開示された資料を弁護士間で分担して精査のうえ検討し、法務DDを行いました。
法務DDを行った結果、以下のような法的問題点が判明しましたので、M&Aを行ううえで、影響がある事項については、最終的に双方で取り交わすことになる株式譲渡契約書において、所定の条項を設けるよう助言いたしました。

(1)未返済の債務の存在について

対象会社の決算書を確認したところ、未返済の借入債務の存在が判明しました。
そこで、未返済の債務に関する成立時期や最終弁済の時期について、対象会社に対するマネジメントインタビュー(ヒアリング)を行いました。

対象会社に対するヒアリングの結果、債務の成立時期は20年以上前とのことで、時効が成立している可能性が高いと考えられましたが、諸般の事情から、依頼会社が責任を負わない形での対処が必要と助言いたしました。

(2)株式譲渡の有効性について

株式譲渡によるM&Aを行う場合には、対象株式の所有者が法的に正当な権利者であることを確認する必要があります。

正当な権利者であるかどうかの確認については、原始定款やそれ以降の株式譲渡に関する契約書を確認することが考えられますが、会社設立から年数が経過している歴史のある会社の場合、全ての資料が保管されていないケースもあります。
そういった場合は、株主総会等の議事録や会社の確定申告書等の書類を確認する必要があります

今回は、会社設立時からの株式保有状況や株式譲渡の経緯について確認を行った結果、記録上では追跡できない株式の移動が存在することが判明しました。

そこで、この件についても対象会社に対するヒアリングを実施したところ、記録上では確認ができなかった株式移転がなされた経緯が判明し、決算書記載の株式保有状況と一致することが確認できました。

そのほか、対象会社は株券発行会社として存在していた事実がありましたが、対象会社へのヒアリングを行った結果、株券を発行したことは一度もないとの回答があり、株式譲渡の有効性を確保するために必要な対応及び助言を行いました。

(3)簿外債務の存在について

対象会社の決算書類を確認したところ、従業員への未払残業代の存在が判明しました。
この債務は、対象会社の貸借対照表等の決算書上には記載がなされていない債務であり、いわゆる簿外債務といわれるものです。

未払残業代について何も対処をせずに株式譲渡によるM&Aを行うと、買い手である依頼会社様に、従業員(退職者を含む)から未払残業代の請求がなされた場合、それを支払う債務も引き継がれることになってしまい、経済的なデメリットはもちろんのこと、M&Aした矢先に労務トラブルを抱えることになるため、買い手にとって非常に大きなリスクとなります。

上記問題点に対する対処方法として、対象会社が直ちに従業員に対して未払残業代を支払うことが考えられますが、法務DDにおいて判明した簿外債務という性質上、一般的には、このような対応を取ることは難しいケースが多く、本件においても、最終的に取り交わす株式譲渡契約書にて表明保証条項など、必要な条項を設定することで対処しました。

表明保証とは

売り手が買い手に対し、最終契約の締結日や譲渡日等において、対象企業に関する財務や法務等に関する一定の事項が真実かつ正確であることを表明し、その内容を保証するものをいいます。

3.株式譲渡契約締結までの期間と弁護士費用の目安

ご相談の事例において、依頼会社様よりご相談を受け、法務DDを実施し、最終的な株式譲渡契約の締結(M&A)に至るまでに要した期間と三輪知雄法律事務所の弁護士費用は以下のとおりとなります。

ご相談から最終的な株式譲渡契約の締結に至るまでの期間と弁護士費用

  • 期間:3ヶ月程度~
  • 費用:55万円~

※消費税込の価格です。実費、日当等は別途。
※費用は、あくまで参考としてお示しするものであり、顧問契約の有無や相談内容によっても異なりますので、詳細は法律相談の際に担当弁護士までお問い合わせください。

4.三輪知雄法律事務所の担当弁護士からのコメント

本件の担当弁護士
三輪知雄法律事務所
代表弁護士:三輪 知雄

三輪知雄法律事務所の代表弁護士・税理士。
出身地:名古屋市。出身大学:京都大学法科大学院。
主な取扱分野は、労務トラブル、M&Aに伴う法務DD、ハラスメント・クレーム対応、問題社員対応、経営者の相続・事業承継など。

M&Aは、買い手にとっても売り手にとっても企業にとってはとても重要な取引となります。

特に、買い手にとってM&Aにおいて譲り受けることになる対象会社の法的な問題点は、会社や株式を譲り受けた後のリスクを回避するために、M&Aの前に全てを把握した上で、しかるべく対処をしておきたいものです。

そこで、鍵となるのが法務DDであり、法務DDを適切に行うことでそういった法的な問題点を事前に発見することが可能となります。
そして、法務DDによって判明した法的問題点については、M&Aを実行する前に正しく対処することで、買い手側の予期せぬ損害を防ぐことができます

三輪知雄法律事務所は、M&Aや法務DD(デューデリジェンス)対応した経験も豊富にありますので、今回の依頼会社様のように、事業拡大のためにM&Aをご検討されている企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。

5.法務DDについてのご相談は、三輪知雄法律事務所へ

三輪知雄法律事務所の「法務DD」に関するお問い合わせは、以下の「電話番号(受付時間・平日 9:00~18:00)」にお電話いただくか、下記の画像をクリック頂き、メールフォームによるお問い合わせも受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

※この記事は公開日時点の法律をもとに作成しています。