【試用期間中】【退職勧奨】業務の適性に問題があった社員に対し、本採用を拒否し、試用期間満了をもって合意退職した事例

ご相談の事例

当事務所の顧問先のリサイクル業の社長様から、試用期間中の新入社員に対し先輩社員から業務に関する指導等を行った後、当該社員が、社内で「自傷行為」を行ったとして、今後の対応についてご相談がありました。

本採用を自由に拒否できるか?

試用期間中の社員の地位

試用期間中の社員は、社員として不適格と認められた場合には労働契約を解約できるという「解約権」が留保された労働契約が締結されていると考えられています。

試用期間といえども、会社と社員の間には労働契約が成立していることになります。
本採用拒否は、「採用拒否」というより「解雇」に近いと考えてください。

自由に本採用拒否ができるわけではなく、裁判例では、「客観的に合理的な理由があり、社会的にも相当として認められる場合」として限定されています。

したがって、会社としては、強引に「本採用拒否」を行えば、どうしても不当解雇の主張を受けるリスクがあるため、当該社員と協議の上、試用期間満了時をもって合意退職を目指す方が、リスクは少ないといえるでしょう。

試用期間の延長は可能か?

試用期間の定めは、正式採用までの保留期間との位置づけからすれば、これの延長は社員の労働条件にとって不利益を及ぼすものであるため、原則として就業規則などに明確な定めが必要であり、延長の理由、延長の期間は合理的なものでなければなりません。

試用期間の延長を会社が一方的に決め、社員に口頭で通告するような方法では、後々、試用期間の延長をめぐって会社の不当対応として、裁判上争いになる可能性があり、会社は決めて不利です。

以下に述べるように、客観的に合理的な延長理由を確保し、書面で通知を行う必要があるでしょう。

三輪知雄法律事務所のサポート及び本件の結果

①試用期間の延長を検討

ご相談の会社では、試用期間を3ヶ月間と定めていたところ、問題となった行動が発覚したのは、試用期間が2ヶ月以上過ぎた段階でした。
そのため、残りの試用期間が1ヶ月を切っており、本人の病院での治療、産業医の意見聴取、これまでの働きぶりの調査など、今後の対応を検討する時間が十分にないため、試用期間の延長が検討されました。

上記のとおり、試用期間は、労働者の権利に影響があるため、一方的な延長はできませんが、本件では、社長様と顧問弁護士が打ち合わせを行い、残りの試用期間では、医師への意見聴取や仕事への適性の見極めには足りないと判断されたため、試用期間の延長を行うこととし、通知書面・同意書を担当弁護士が作成しました。

ご相談の会社では、就業規則は設けられていないため、社長様と上司が、新入社員及び親御さんと面談のうえ、試用期間を2ヶ月程度延長することを書面にて通知し、同意をもらいました。

②社員のこれまでの働きぶりなど調査

現場の上司は、ケガが治れば仕事に復帰させなければならないと思っており、社長様は、即座に解雇したいというお考えでした。
しかし、この考え方はいずれも適切ではないことを、担当弁護士から説明しました。

まず、試用期間とはいえ、仕事がストレスになって自傷行為が引き起こされた可能性があり、会社としては、社員の労働環境について調査・配慮する義務があります。
弁護士からの指示により、本件の上司の指導やこれまでの本人の働きぶりを会社が調査したところ、上司は他の新入社員に対しても同様の指導を行っていましたが、この社員だけいつも上の空であったり、勤務中にスマートフォンを操作終業時間になるとソワソワして仕事が手につかなくなるなど、問題行動が多数、確認されました。

また、弁護士の指示により、会社が産業医から事情聴取したところ、これまでもストレスを感じた際、何度か自傷行為を行ったことがあることが明らかになりました。

当該社員のストレスに強くない性質が明らかになったため、会社としては、医師から復職可能との判断をうけるまでは、休職させることとし、本人に通知しました。

③合意退職を目指す方針の決定

当該社員の問題行動とストレスに強くない性質が明らかになり、社長様は、リサイクル業として業種の性質上、顧客対応やクレーム対応が頻繁に発生するため、すぐに解雇することを主張されましたが、担当弁護士より、解雇については、上司の指導方法の当否などを問題にされ、不当解雇との主張を受けるリスクがあることを説明しました。

産業医から復職可能との判断がなされたため、産業医及び弁護士の指導の下、従前の配属とは異なる部署に配置しました。
その様子を慎重に確認した後、社長様と上司と本人及び親御様とで面談を行い、自社の業務では顧客対応が必須であり、ストレスを強く感じてしまう思われること、年齢的にも若く、ストレスを感じない仕事を探した方がよいのではないかとの話をし、残りの試用期間分の給料は支払う形での合意退職を提案しました。

本人及び親御様も会社に迷惑をかけたとの認識があり、その場で退職合意書に署名し、試用期間満了をもって合意退職となりました。
本件を有効に一括解決するため、退職合意書の書式は担当弁護士が準備いたしました。

担当弁護士のコメント

会社との綿密な打ち合わせを行います

弁護士 三輪知雄 写真 企業法務 立ち退き 離婚 相続

本件の担当弁護士
三輪知雄法律事務所
代表弁護士:三輪 知雄

三輪知雄法律事務所の代表弁護士・税理士。
出身地:名古屋市。出身大学:京都大学法科大学院。
主な取扱分野は、「労務トラブル、クレーム対応、問題社員対応、事業の倒産、経営者の相続・事業承継など」。

社長様は、専務時代に、社内の経費の使い方やささいなことが原因で、先代の社長(お父様)と喧嘩後、三代目の社長を継承したばかりでした。
先代の社長に間違いを正すくらい勢いがありましたので、経営に対する情熱はありましたが、一度こうだと思ったら融通が利かないところがあり、弁護士として少し心配な一面がございました。

本件についても、社長様は、このような事態を起こした新入社員を即座に解雇したいとのご希望でした。

社長様のご希望に対し、担当弁護士は、法的リスク等を理由に否定するのではなく、その想いをさらに深掘りしてお聞きするという対応を致しましたところ、社長様からは、リサイクル・廃棄物処理という業種柄、顧客やクレーム対応などがきちんとできる社員を育成したい、そのために、しっかりと教育を行いたいという想いを明確に語って頂くことができました。

社長様の想いを受け、担当弁護士から、社長の方針を明確に示すことと、労務トラブルが発生しないように安全に会社経営を行うことは相反するものではなく、両者は両立すること」、「当該社員は自社には合わないが、他の会社でなら適性を見いだすことができるかもしれず、円満に送り出した方が本人のためでもあり、自社が後々恨まれる可能性も少ないこと」を打ち合わせなどを通じて、繰り返し説明しました。

社長様は、社長補佐を務められる奥様にもご相談され、最終的には、担当弁護士の方針を受け入れて頂きました次第です。

本事例の弁護士費用について

ご相談の事例において、解決まで要した期間と三輪知雄法律事務所の弁護士費用は以下のとおりとなります。

ご相談から解決までの期間弁護士費用

・約2ヶ月程度

・顧問料のみ(諸事情により、顧問料の範囲内での対応) 

※税、実費等は別途。

※費用は、あくまで参考としてお示しするものであり、顧問契約の有無、会社の社員数、規模、ご相談内容等によっても異なりますので、詳細は法律相談の際に担当弁護士までお問い合わせください。

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※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。