【ユニオン】【団交】合同労組・ユニオンに加入した社員から労災の主張及び団体交渉が行われたものの、弁護士介入により、早期退職に至った事例

ご相談の事例

ホームページよりご相談に来られた会社の社長様(製造業)より、工場勤務の社員が、合同労組(社外ユニオン)に加入し、同組合から団体交渉の申入れ通知が送付されてきたとして、今後の対応についてご相談がありました。

合同労組による団体交渉(団交)を自由に拒否できるか?

合同労組(ユニオン)とは?

日本の大企業では、企業別に労働組合を組織しているのが一般ですが、中小企業の労働者は、企業別で労働組合を組織しているところはほとんどありません。
そのような労働者が、一定地域や職種等で、個人加盟が可能な労働組合を合同労組と呼び、ユニオンもその一種となります。

団体交渉(団交)とは?

団体交渉とは、労働組合が、使用者側と労働に関する条件やその他の事項について、交渉することをいいます。

大企業の労働組合が、「春闘」等でテーマにするのは、労働者全体の労働条件等をテーマにすることが多いです。

これに対し、中小企業の合同労組・ユニオンは、加盟している、いち労働者の残業代の未払、解雇の違法性などについて交渉することが通例です。
労働者の立場からみれば、個別の問題解決を合同労組に依頼したということもできますし、会社の立場から見れば、団体交渉は、労務紛争・労務トラブルについての、裁判に至る手前の交渉段階として理解した方が分かりやすいかと存じます。

団交を自由に拒否できる?

このような合同労組・ユニオンとの団体交渉は面倒だから、拒否して、労働者本人と交渉すればいいじゃないかと考えがちですが、そのようなことは許されません。
合同労組・ユニオン側は、憲法に根拠を有する団体交渉権の行使として、労働者の権利保護のために活動しているので、労組を通さない労働者との直接交渉は、この団体交渉権を侵害するものであり、違法とされています。

合同労組・ユニオンを無視した直接交渉は、かえって憲法違反、法令違反等の指摘を受け、組合側に有利に交渉を進められてしまう恐れがありますので、団体交渉の申し入れ自体が適法であるならば、会社としてこれを受け入れた上で、適切な対応を取る必要があります。

三輪知雄法律事務所のサポート及び本件の結果

①団体交渉申し入れに対する方針の決定

ユニオンから会社に送られてきた「団体交渉申入書」を確認したところ、ある社員が、勤務中に左足を負傷し、現在、休業中であること、会社に対する労災申請の協力賃金の立替払いの要求、さらには未払いの残業代について早期の支払いを求めるとの目的で、団体交渉を申し入れるとの記載がありました。

また、団体交渉の日時について、通知から10日後午前9時に、会社から50km以上離れた、隣の県にある組合事務所が一方的に指定されていました。

さらに、就業規則やタイムカードの写し等の資料全てを1週間後までに、合同労組に送付するよう求める記載もありました。

相談に来られた会社の社長様は、団体交渉当日は出張の予定が入っており、慌てて予定をキャンセルしようとしていましたが、三輪知雄法律事務所の担当弁護士より、団体交渉の日時、場所等については、合意により決定すべきであり、ユニオン側の一方的な指定に応じる必要はない旨、説明を受け、落ち着きを取り戻しました。

また、ユニオン側が求める要求のうち、労災による賃金の立替払いの請求については、労働者の受傷が本当に労災といえるのか、会社の業務との因果関係、会社の安全配慮義務違反が問題となります。
会社として、社員の労災の申請に協力すべき義務はありますが、現時点で、労災の認定が出されたわけでもありませんし、仮に労災であったとして、現時点で、会社の過失が認定されたわけでもありませんので、立替払いの要求に応じる必要はありません。

ユニオンが要求した資料については、要求と因果関係があると考えられる資料については、開示する必要がありますが、資料が大量・広範囲で準備に時間を要する場合には、その旨説明し、合理的な時期に開示すれば足りると考えられます。

②団体交渉申入書に対する回答書の作成

上記の方針を、三輪知雄法律事務所の担当弁護士より社長様にご説明し、会社名義の回答書を作成しました。
回答書の内容としては、骨子以下のとおりです。

  • 団体交渉自体は応諾
  • ユニオン側が指定する団体交渉の日時は、複数の参加者の日程調整の必要上、都合が合わず応じられない
  • ユニオン側が指定する団体交渉の場所は、両者の中間地点かつ中立的な場所にすべき
  • 開示を求められた書類のうち関連性が認められる書類については量が多いため、○日までに準備し、送付する。
  • 賃金の立替払いには応じられない

回答書を作成し、社長様にも回答書の内容をメールでご確認いただいた上で、会社からユニオン側に送付しました。

③ユニオン側からの反論書と最終解決への提案

社長様が、社内調査をしたところ、当該労働者が手を痛めたとして休業中に、職場の同僚とのソフトボールに参加していたことが判明しました。複数の同僚から、特に手を痛めて苦しそうなそぶりはなく、休業中には見えなかったという証言も得られました。

その後、すぐにユニオン側から反論書が届きました。
内容は、組合事務所での団交の実施は決定事項である旨述べ、組合事務所での団交を受け入れない当方の姿勢を批判し、また、労災被害の責任を認めるべきとの主張でした。

これをふまえ、社長様と担当弁護士で今後の対応を協議したところ、社長様によると、この社員は、元々、業務成績が芳しくないとのことでした。
また、担当弁護士より、労災なのか疑わしい受傷について、会社に権利主張を行ってくるこの社員を雇用し続けること自体が会社にとってリスクとなる可能性をふまえ、この社員に早期に退職してもらい、本件を早期解決し、会社への悪影響を最小限に留めるとの解決方針を決定しました。

ユニオンからの反論書に対しては、中立な場所での団体交渉の開催を要請するなど、誠実な交渉を継続するとともに、担当弁護士より、ユニオン側に対し、休業中のソフトボールの参加の事実をふまえ、労災の因果関係について会社として疑義を持っていること、及び、当該社員の契約更新のまで残り期間(3ヶ月)の給与相当額を支払うことにより、早期退職とする方向で打診を行ったところ、最終的には合意に至りました。

担当弁護士とユニオン側、労働者本人の三者間で、解決の合意書を取り交わし、早期退職、解決金の支払、今後、会社への請求等は一切行わないこと等の条項を取り交わし、当該労働者は早期退職となりました。

なお、本件について永久的かつ有効な解決とするため、合意書の書式は担当弁護士が作成しています。

担当弁護士のコメント

合同労組・ユニオン対応は会社との方針共有が重要です

弁護士 三輪知雄 写真

三輪知雄法律事務所 
担当弁護士・税理士:三輪 知雄

出身地:名古屋市。出身大学:京都大学。主な取扱い分野は、主な取扱分野は、労務トラブル、ユニオン対応、クレーム対応、立ち退き問題、経営者の相続等。

合同労組・ユニオンとの団体交渉については、当該労働者とのトラブル処理の観点だけでなく、他の社員への影響、顧客や本業への影響等を考慮し、会社と担当弁護士の間で、解決方針について十分に打ち合わせを行う必要があります。

本件では、社長が創業者の長男で、創業者のお父様から言われるがままに社長になり、まだ経営者としての覚悟がしっかりできていなかったという事情がありました。

社長様自身も、流されるままに異業種交流会などに入ってみたものの、自分よりも儲かっていない経営者が必死になって切磋琢磨している姿を目の当たりにし、自分はそこまで頑張れないとしらけてしまい、真剣に経営に打ち込んでいないことを指摘され、腹を立てて異業種交流会を辞めてしまうなど、恵まれた環境にあぐらをかいていました。

社長様も、担当弁護士とともに、今回の件が起きた原因を分析され、先代のころからいる番頭に言いたいことも言えず、社員に対する方針共有・教育など面倒なことから逃げているうちに、そんな社長様の姿勢を社員たちに見抜かれ、代替わり直後に、今回のトラブルが発生してしまいました。

今後は、社員1人1人に、社長自ら向き合って、必要な方針共有等を面倒がらずにやっていくとともに、三輪知雄法律事務所と顧問契約を締結し、経営理念に反する言動を取る社員の方には、早期に退職して頂く方針を決定して頂きました。

本事例の弁護士費用について

ご相談の事例において、解決まで要した期間と三輪知雄法律事務所の弁護士費用は以下のとおりとなります。

ご相談から解決までの期間弁護士費用

  • 約2ヶ月程度
  • 合計50万円程度

※消費税、実費等は別途。
※費用は、あくまで参考としてお示しするものであり、顧問契約の有無、会社の社員数、規模、ご相談内容等によっても異なりますので、詳細は法律相談の際に担当弁護士までお問い合わせください。

合同労組・ユニオン対応、団体交渉に強い弁護士へのお問い合わせはこちら

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※この記事は公開日時点の法令をもとに作成しています。