【社内不倫】【問題社員】【懲戒解雇】 社内不倫をした従業員に対し、懲戒処分などにより、問題を解決した事例 ~社内不倫の対処と懲戒解雇する際の注意点~

1.業種、相談の概要

タイヤ販売、運送業の社長様からのご相談です。

正社員の男性(既婚)と有期雇用契約のパート契約の女性(未婚)が、不倫をし、女性が妊娠しました。

社内や一部の顧客には噂が広がっており、他の社員からも、「風紀を乱すような人と一緒に働きたくない」、「どのように接したらいいのか分からない。気まずくて、職場の空気が悪くなった」、「会社は不倫を許すのか!辞めさせろ!」など、厳しい意見が入っています。

社長自身は不倫についてそれほど気にされていないようでしたが、先代の会長の長女で経理を担当されていた社長の奥様が、不倫に関してはかなり厳格な考え方の持ち主でした。

社長自身もそこには同調せざるを得ない雰囲気があり、他の社員への影響や、会社の風評被害の可能性を鑑み、男性社員とパートの女性を、懲戒解雇したいと考えました。

依頼会社様は、このように社内不倫をした従業員に対して、懲戒解雇ができるのかどうか、三輪知雄法律事務所にご相談にいらっしゃいました。

2.社内不倫を理由に従業員を懲戒解雇できるか?

社内不倫による安易な懲戒解雇は危険!

会社の風紀の回復や風評リスク対応を優先するあまり、社内不倫や男女問題を理由に安易に従業員を解雇することは、解雇の効力が争われる可能性が高く、非常にリスクが高いです。

具体的には、解雇後に「不当解雇」として、懲戒解雇した従業員から訴えられる可能性があります。
裁判所で、「不当解雇」と判断されると、数百万円を超える支払いを命じられることもあります。

社内不倫による懲戒解雇が正当と認められるのはハードルが高いです。
不倫した側にかなり問題があると思われるケースでも、不当解雇と判断される裁判例が多く出ています。

3.なぜ、不貞行為をしているのに、不当解雇と判断されるのか?

不倫は、法律上は「不貞行為」と呼ばれ、特に配偶者との関係では、民事上は違法行為と評価されます。

会社内では、社内不倫に対しては、多くの企業の就業規則に記載されている、「社内の秩序、風紀を乱し、または乱すおそれのあったとき」などの懲戒事由の適用が考えられます。

それにもかかわらず、社内不倫を理由に、従業員を解雇すると不当解雇と判断されてしまうのは、なぜでしょうか?

その理由は、裁判所が「従業員の私生活上の行為に対する問題については、原則、会社が指揮命令権を及ぼすことができない。したがって、たとえそれが違法行為であっても、私生活上の問題を理由に懲戒解雇することはできない」と考えているからです。

つまり、不倫で解雇するためには、社内不倫が従業員の私生活上の問題にとどまらず、会社に重大な損害(実害)を与えていることなどを理由にしなければなりません。

例としては、下記のような場合には、解雇が正当と判断される可能性があります。

  • 小規模同族会社で、不倫により、会社に重大な悪影響や損失が発生した場合
  • 不倫により、女性従業員が中絶など健康被害を被り、退職を余儀なくされたなど、会社に損失が発生した場合。また、将来の採用にも悪影響が予想される場合
  • 例えば、教員と保護者の不倫関係など、職業の特殊性が考慮される場合
  • 会社において、不倫問題の当事者や配偶者が、口論になったり、警察ざたになるなど、企業秩序に重大な影響を与え、会社の社会的信用を大きく下げた場合

しかしながら、たとえ上記の例に当てはまったとしても、必ず正当な解雇であったと判断されるわけではなく、やはり社内不倫を理由とする安易な解雇は、会社としては慎重になった方がいいと考えられます。

4.社内不倫問題は、どのようにして対処すべきか?

社内不倫問題については、上記で説明したとおり、例外的に解雇が正当とされるような場面を除き、解雇以外の解決方法を検討する必要があります。

それでは、社内不倫問題はどのように解決すれば良いのでしょうか?

方法1:懲戒処分したうえで、配置転換を行う

複数の職場・部署がある会社であれば、対象者に懲戒処分を科したうえで、不倫関係にある男女両者を、別々の職場・部署に配置転換することができます。

なお、懲戒処分については、懲戒解雇より軽い「戒告あるいは譴責処分」、「減給処分」、「出勤停止」、「降格処分」などの中から、不倫によって会社が受けた損害の重要性の程度に応じて適切なものを選択することとなります。

方法2:懲戒処分したうえで、退職勧奨を行う

職場が1カ所しかない会社においては、配置転換による対応が難しい場合もあるため、懲戒処分をするにとどめるか、懲戒処分したうえで、退職勧奨の実施を検討することになります。

退職勧奨とは、退職勧告ともいい、会社から従業員に退職を促すことを指しますが、解雇とは違い、あくまで従業員に退職について了解してもらい、同意の上、退職届を提出してもらって退職してもらうことを目指す方法です。

社内不倫により会社業務に重大な支障が生じていることや職場の人間関係が悪化していることを話して、対象者を退職に向けて説得することになります。

退職勧奨の具体的な方法や注意点については、以下の記事で解説しておりますので、あわせてご覧ください。

5.会社に関する不倫問題の例外

以下のように、社外の人間が関わる不倫の場合、解雇が妥当と判断されることもあります。

  • 立場の弱い取引先の従業員に対し、無理やり不倫関係を結んでいたなど、パワハラやセクハラに該当する場合
  • 従業員と取引先の客の不倫が発覚し、取引先の信用を失い、契約を解除されるなど、会社に具体的な損失が発生した場合

裁判例を見る限りは、ケースバイケースという判断かと思われますので、詳しくは、弁護士へご相談ください。

6.三輪知雄法律事務所では、社内不倫問題について、次のようなサポートを行います

三輪知雄法律事務所の社内不倫問題に関するサポート

  • サポート1:社内不倫問題に対するご相談
  • サポート2:弁護士による懲戒処分の検討、手続の実施
  • サポート3:退職勧奨や解雇通知の際の面談の立会い
  • サポート4:解雇後や懲戒処分後のトラブルへの対応
  • サポート5:顧問弁護士サービスによるサポート

サポート1:社内不倫問題に対するご相談

三輪知雄法律事務所には、社内不倫など労務トラブルについて、対応経験豊富な弁護士が在籍しております。

ご相談の際は、社内不倫が原因で発生している問題について、ご担当者様よりヒアリングを行い、過去の事務所での対応経験や、最新の判例動向も加味したうえ、貴社の実情にあった実効的なアドバイスをいたします。

サポート2:弁護士による懲戒処分の検討、手続の実施

三輪知雄法律事務所では、社内不倫を行った問題社員に対する懲戒処分の検討や懲戒手続などについても、サポートを行います。

懲戒すべき事情があるかどうかの調査、判例に照らし妥当な懲戒処分の選択、懲戒処分の言い渡しまで、弁護士が同席してサポートすることが可能です。

懲戒については、まず、懲戒にすべき事情があるかどうかの調査を正しく行うことが重要です。

調査には、十分な情報収集・証拠収集、ヒアリング結果の証拠化が必要であり、当該社員からの反論等もありうることからすれば、弁護士のアドバイスを受けて行うことが必要かと思われます。

どのような懲戒処分を科すかという選択の場面でも、弁護士の助言を受けることが必要ですし、懲戒処分の通知書を正しく作成することも重要です。

懲戒処分の言い渡しの際、従業員が不満を述べてきたり、反論してきたりすることがあります。

トラブルを防止するためには、言い渡しの場に、専門家である弁護士が同席することが効果的です。

三輪知雄法律事務所では、労務トラブルに強い弁護士が、懲戒処分の言い渡しの場に同席し、会社側の立場で適切な応答をするなどして、懲戒処分の言い渡しをサポートいたします。

懲戒すべき事情があるかどうかの調査、懲戒処分の選択、懲戒処分の言い渡しに不安がある場合、ぜひ三輪知雄法律事務所にご相談ください。

サポート3:退職勧奨や解雇の際の面談の立会い

三輪知雄法律事務所では、退職勧奨や解雇の際の面談の立会いも行っております。

退職勧奨や解雇の問題に精通した弁護士が立ち会うことで、円滑に退職勧奨や解雇を進めることができます。

退職勧奨については、退職の違法な強要であるとか、パワハラであるなどと主張して、裁判を起こされるケースもありますので、弁護士のサポートを受け、慎重に行うことが重要です。

また、解雇の際に必要な解雇理由書や解雇通知書の作成・発送も対応しております。

解雇理由書や解雇通知書が弁護士名で届くことにより、受け取った、受け取っていないなどの混乱は防止できますし、受け取る側の意識も変わりますので、トラブルは起きにくくなります。

また、解雇の問題に精通した弁護士が書面作成にかかわることによって、万が一、裁判などに発展した時のことも想定し、不利にならないような書面作成が可能となります。

退職勧奨の具体的な方法や注意点については、以下の記事で解説しておりますので、あわせてご覧ください。

サポート4:解雇後や懲戒処分後のトラブルへの対応

三輪知雄法律事務所では、解雇あるいは懲戒処分をした従業員とのトラブル対応や、裁判対応のご依頼も承っております。

解雇した従業員が、不当解雇であるとして復職を求めたり、会社に金銭を要求してくる場合、または、懲戒処分した従業員が、不当な懲戒処分であるとして撤回を求めてくる場合、弁護士が会社に代わり、従業員との交渉や、裁判の対応を行います。

サポート5:顧問弁護士サービスによるサポート

三輪知雄法律事務所では、社内不倫問題に限らず、問題社員の対応にお困りの企業を継続的にサポートするため、顧問弁護士サービスによるサポートも行っています。

顧問弁護士サービスでは、トラブル発生時の対応方法についての疑問点を、その都度、電話やメールで弁護士に相談していただくことが可能です。

7.本事例の解決結果と弁護士費用の目安

本事例の解決結果

本事例については、社長様及び会社の担当者様からヒアリングを行うと、確かに、社内不倫により、職場や顧客への悪影響は考えられましたが、会社に重大な損害を及ぼしたとは言いがたい状況でした。

担当弁護士にて、判例等と照らし合わせた結果、懲戒解雇を行ってしまうと、仮に訴訟を起こされた場合、不当解雇として裁判所に判断される可能性が高いと判断されましたので、その旨を担当弁護士より、社長様と担当者様へお伝えしました。

しかし、社長様と担当者様にはご理解頂けましたが、会長の長女であり経理担当をしておられた社長の奥様は、社長の説明に対しても、頑なな態度で全く聞き入れて頂けなかったということでした。

三輪知雄法律事務所の担当弁護士は、奥様がここまで頑なであることについて疑問を感じ、社長に背景をお尋ねすると、実は過去に社長の不倫問題があり、社長の奥様が不倫一般に関して非常に強い嫌悪感をお持ちとのことでした。

状況解決のため、社長の要請を受け、担当弁護士が、社長のご自宅を訪問し、奥様に説明の機会を頂くこととなりました。

当日、社長のご自宅を訪問すると、社長ご夫婦に加えて、初めてお会いする会長のご夫婦も同席しておられ、担当弁護士は、話がこじれてさらなる法律トラブルが発生してしまうことを危惧しました。

しかし、社長ご夫婦が、会長ご夫婦の同席について同意されている以上、弁護士として、同席を断る合理的な理由がないため、社長に行ったのと同様に、判例等をふまえ、「懲戒解雇を行ってしまうと、裁判になった場合、不当解雇と認定される危険が高い」こと、きちんと「懲戒処分を行う以上、会社が不倫を許したり、社長や会社幹部の不倫を容認することにはならない」という趣旨の説明を行いました。

幸いなことに、社長の奥様と会長ご夫婦にはご理解を頂け、代わりの対応策として、男性社員には、懲戒処分を行ったうえで、別の支店へ配置転換を行うようアドバイスを行いました。

パートの女性については、不倫関係が知れ渡ってしまったことを受け、次回の雇用契約の更新を希望しないとのことでしたので、その方向で対応することとなりました。

従業員への面談には弁護士が同席し、社内不倫による職場への悪影響について、客観的な証拠に基づく説明を行いました。
当事者たちも、このまま同じ職場で働き続けるのは気まずいと思っていたらしく、会社の提案に応じることとなりました。

本件については、三輪知雄法律事務所が会社の顧問弁護士であったため、会社の社風や社長の性格への理解があり、社長の奥様や会長ご夫婦への説明にも柔軟に対応することができました。
また、職場の空気も元に戻り、他の社員達も気持ち良く仕事ができるようになったとのことです。

本事例の弁護士費用について

ご相談の事例において、解決まで要した期間と三輪知雄法律事務所の弁護士費用は以下のとおりとなります。

ご相談から解決までの時間と費用

約2ヶ月程度

・着手金:15万~30万円 
報酬:15万~30万円
・日当:3万円

※税、実費等は別途。

※費用は、あくまで参考としてお示しするものであり、顧問契約の有無やご相談内容によっても異なりますので、詳細は法律相談の際に担当弁護士までお問い合わせください。

8.社内不倫に関する対応は三輪知雄法律事務所へ

社内不倫の問題に対し、安易な懲戒解雇には、不当解雇として裁判などを起こされる危険がありますが、職場への悪影響や会社への損害に応じて、懲戒処分や退職勧奨など、適切な対応を検討する必要があります。

三輪知雄法律事務所の「問題社員の対応」に関するお問い合わせは、以下の「電話番号(受付時間・平日 9:00~18:00)」にお電話いただくか、下記の画像からメールフォームによるお問い合わせも受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

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※この記事は公開日時点の法律をもとに作成しています。