就業規則改訂により、年次有給休暇の計画的付与制度を導入し、有給休暇の取得義務に対応した事例|三輪知雄法律事務所

1 業種、相談の概要

運送業の社長様からのご相談です。

メインの取引先への商品の配送を、月4回の頻度で行っていましたが、取引先からのご要望で、月2回の配送へと配送形態が変更されることになりました。

社長様は、メインの取引先への配送業務を行わない2週間は、配送担当の従業員の半数が浮いてしまう状態になるが、急な配送業務の依頼や人員不足に備えて、従業員の人員は確保しておきたいとのことでした。

しかし、雇用を減らしたりすることがなく、また、社内で有休の取得が進んでいないので、その両者をうまく解決するいい方法はないか、三輪知雄法律事務所にご相談にいらっしゃいました。

2 有給休暇の計画的付与制度とは

相談者様よりお話をお聞きする中で、三輪知雄法律事務所の担当弁護士より、「有給休暇の計画的付与制度」を活用することでこの事態に対処できるのでは、とご提案致しました。

有給休暇の計画的付与制度とは・・・

従業員に有給休暇を計画的に付与する旨を就業規則に定め、有給休暇のうち5日を超える部分について、指定日に有給休暇を与えることができるという制度(労基法39条6項)。

年次有給休暇付与の指定方法については、労使協定(※)で定めておく必要があります。

※使用者と、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは、労働者の過半数を代表する者との書面によって締結した協定のことをいいます

有給休暇の付与に関する指定方法

一般的には、以下の3パターンが考えられます。

有給休暇の付与に関する指定方法

①事業場全体での一斉休暇
②班別の交代制休暇
③計画表による個人別休暇

依頼会社様の場合は、ご相談内容及び事業内容から判断し、②班別の交代制休暇、または、③計画表による個人別休暇が適切であると考えられました。

例えば、②班別の交代制休暇を適用した場合には、労使協定において具体的な休暇日を定めることになります。

しかし、通常、年度によってカレンダーが変わりますので、日にちも変わることになると、その都度、労使協定の変更が必要になると考えられますが、その分、煩わしい手続が増えることになります。

しかし、③計画表による個人別休暇を適用すれば、労使協定において、計画表の作成時期や手続を定めたうえで、当該手続きに従い、会社側で年休計画表を作成することになります。

この方法によると、その都度の労使協定の変更を伴うことなく、年度ごとに柔軟な対応が可能となります。

三輪知雄法律事務所の担当弁護士より、依頼会社様に対し上記内容の説明を行い、③計画表による個人別休暇を適用した「年次有給休暇の計画的付与に関する労使協定」を作成いたしました。

3 有給休暇の残り日数が足りない従業員への対応

有給休暇の計画的付与制度は、有給休暇のうち、5日間を超える部分についてのみ指定が可能という制度です。労働者が自由に指定できる日数を5日未満としてしまうと労基法違反となってしまいます。

依頼会社様は、有給休暇10日間の計画的付与をご検討されておりましたので、有給休暇の日数が、5日間+10日間=15日間以上の従業員については、問題なく計画的付与を行うことが可能です。

しかし、問題となるのは、有給日数が足りない従業員への対応についてです。

有給休暇の日数が15日未満の従業員について、計画的付与を行おうとする場合、以下の3つのうち、いずれかの対応が必要となります。

有給休暇の残日数の問題に対する対処方法

①計画的付与日数に不足する日数分を、特別休暇として与える。
(例:有給休暇日数が10日間の従業員について、12日間の計画的付与を行う場合、計画的付与される12日間のうち、5日間を有給休暇、7日間を特別休暇として扱う)

②休業扱いとしたうえで、休業手当(平均賃金の60%)を与える。

③計画的付与の日数を少なくして、帳尻をあわせる。
(例:有給休暇日数が12日の従業員に、6日間の計画的付与を行い、残りの6日間は自分で選択できる有給休暇とする)

依頼会社様は、給与や労働条件をできる限り変更することなく、従業員の皆様に有給休暇を付与するお考えでしたので、③の方法により、有給休暇の残日数が足りない方に対して、有給休暇を取得することとなりました。

4 就業規則改訂の流れ

ステップ1:就業規則の変更案を作成

まずは、就業規則の変更案を作成します。

就業規則の変更・改訂に当たっては、変更を予定している内容が不利益変更(※)に該当するものかどうかを確認する必要があります。

※就業規則の不利益変更とは・・・

就業規則により「労働条件を従業員にとって不利益に変更すること」をいいます。

不利益変更に当たる場合、就業規則の変更が許されるのは、変更が合理的な場合に限られます(労働契約法10条)。

今回の依頼会社様のご相談は、就業規則の不利益変更には当たらないと考えられますので、この点は特に問題になりませんが、不利益変更に当たらないかどうかは重要なポイントですので、きちんと確認する必要があります。

ステップ2:従業員代表者からの意見聴取

就業規則の変更については、作成時と同様に従業員代表者(※)からの意見聴取が義務付けられています。

※従業員代表者とは・・・

:文字通り従業員の代表のことを言いますが、従業員全員の意思に基づいて選出されるなど、所定の条件を満たす必要があります。

※管理監督者は、従業員代表者にはなれません。

ステップ3:就業規則変更届の提出

従業員代表者からの意見聴取が終わった後に、就業規則変更届を「労働基準監督署」に提出します。

ステップ4:変更後の就業規則の周知

変更後の就業規則は、従業員に周知することが義務付けられています。

5 有給休暇の年5日以上の取得が会社の義務となっています!

中小企業も例外なし!

2019年4月から法改正され、年10日以上の有給休暇の権利を有する従業員について、毎年5日分の有給休暇については、従業員が有給休暇を消化できるよう会社が義務を負うことになりました。

これまでは、有給休暇を使うかどうかは労働者に任されており、「忙しいから取れない」という人も多かったですが、違反すると企業に罰金が適用されるおそれもあります。

中小企業だからといって、適用が猶予される例外的な措置はありません。すべての事業者が対象となります。

年10日以上の有給休暇

「年10日以上の有給休暇」の権利がある従業員ですが、現実には、以下のように、非常に広範囲の従業員が対象となります。

  • 入社後6ヶ月が経過した正社員
  • 入社後6ヶ月が経過した週30時間以上勤務のパート・アルバイト
  • 入社後3年半以上が経過した週4日出勤パート・アルバイト

これらの正社員、パート・アルバイトについて、毎年5日分について、会社が有給休暇の取得・消化義務を負うことになります。

有給休暇の「計画的付与」か、各従業員の有給休暇日数を個別で管理するか

以上のとおり、中小企業も大企業も、年5日については、有給休暇の消化が義務づけられました。

この義務を履行するために、会社は、有給休暇の計画的付与か、それとも各従業員の有休日数を個別で管理するか、どちらの方法をとるべきでしょうか。

各従業員の有給休暇の日数を個別で管理する方法は、方法は簡易ですが、一人一人の有給休暇の残日数を個別で確認する必要があり、取得が進んでいない従業員に有給休暇を取らせる必要があり、対応が面倒といえます。

一方で、有給休暇の計画的付与については、導入に就業規則の改訂など一定の手続が必要ですが、年末年始や季節的に会社が暇な時期など、会社の業務に支障がない時期に、一斉に有給休暇を取得させることが可能となります。

6 有給休暇の消化、取得義務に違反した場合には罰則があります!

有給休暇取得の義務に違反した場合には、30万円以下の罰金に処される可能性があります。

なお、刑事責任を問われるのは、悪質なケースに限定されるとは思われますが、万一、報道等されますと、インターネット上での書き込みや悪評判が、取引先や会社の業務に悪影響を与える可能性も否定できず、罰則を軽視すべきではないでしょう。

7 三輪知雄法律事務所では、有給休暇取得の義務化や就業規則の変更・改訂について、次のようなサポートを行います

サポート1:就業規則変更案の作成

三輪知雄法律事務所では、相談者様より、就業規則について変更を予定している内容を聞き取り、就業規則の変更・改訂案を作成いたします。

その際に、不利益変更に該当する内容はないか、不利益変更に該当する内容があった場合にどう対処すべきか等、貴社の実情にあった的確なアドバイスをいたします。

貴社で既に変更案を作成している場合でも、補足すべき点があるか、貴社の実情に合った内容になっているか等、労働トラブルや裁判等を多数経験している担当弁護士のノウハウを活かし、アドバイスをいたします。

サポート2:労使協定案の作成

三輪知雄法律事務所では、就業規則変更の際に必要となる労使協定案の作成をいたします。

就業規則の作成や変更は、企業の労働トラブルを未然に防ぐためにも最も重要なことの一つです。

三輪知雄法律事務所では、あらゆる労働事件に関する知識やノウハウを活用し、相談者様をサポートいたします。

サポート3
:有給休暇の取得義務化サポート

上記のとおり、どのような方法で社員の有給休暇の取得を推進するのが良いか、会社の業務内容や社員構成等にもよって異なります。

三輪知雄法律事務所では、担当弁護士が、相談者様の会社の業務内容や社員構成などをお聞きし、会社にとって、適法かつ最も適切な方法で、有給休暇の取得が行えるような制度をご提案致します。

8 弁護士費用の目安

ご相談の事例において、就業規則変更に要した期間と三輪知雄法律事務所の弁護士費用は以下のとおりとなります。

ご相談から就業規則変更完了までの期間と弁護士費用


・期間:約2ヶ月程度(打ち合わせ2回程度)
・費用:10万円~20万円

※税、実費等は別途。
※費用は、あくまで参考としてお示しするものであり、顧問契約の有無や相談内容によっても異なりますので、詳細は法律相談の際に担当弁護士までお問い合わせください。

7 年次有給休暇の義務化や就業規則改訂についてのご相談は、三輪知雄法律事務所へ

三輪知雄法律事務所の「年次有給休暇の義務化」や「就業規則改訂」に関するお問い合わせは、以下の「電話番号(受付時間・平日 9:00~18:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。